国宝として、神器として

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日本刀は切れ味や耐久性といった観点では武器として、装飾や形状といった視点では美術品として、高く評価される逸品です。しかし本当にそれだけの存在なのでしょうか。驚くべきことに、現在国宝指定されている刀剣は100点を超えており、これは全ての国宝の10%に当たる圧倒的な数です。工芸品に絞れば、実に40%にのぼります。もはや武器ではなく、文化財として保護しなければならない対象なのです。

日本刀の重要性に気付いていたのは現代人ばかりではありません。神器と見做したのは古代の人々ですし、美術品と捉えたのは戦国武将たちでした。今更取って付けたように国宝指定するのも考え物ですが、重要性が忘れ去られるよりはよいでしょう。今を生きる我々としては日本刀の歴史を積極的に学ぶことで、日本刀の本質と重要性、今後の保存のあり方が見えてくるのだと考えます。

日本刀という概念、類型が成立する以前より、日本では「三種の神器」と呼ばれるアイテムが畏敬の対象として受け継がれてきました。天照大神より授けられたこれらの宝物を、歴代天皇が継承してきたことはご存知の通りです。「三種の神器」の一つは「天叢雲剣」と呼ばれる刀剣で、刀そのものに神性を認める風習が日本にはありました。神器に限らず、光沢のある鋭利な刃を美しいと感じ、それを畏怖する精神が日本を覆ってきたのです。ですから日本刀以外の刀剣も大切に保存されており、その用途とは裏腹に平和を齎すとさえ信じられています。

ある刀匠によれば、名刀とは、それを見た者に戦争の愚かさを認識させるものだということです。こうした境地に至った刀匠は日本に何人存在するのか分かりません。